ショートステイとは?種類・利用条件・費用・1日の流れを完全解説
在宅介護を続けていると、どうしても家を空けなければならない時や、介護疲れで一息つきたい時がありませんか? そんな時に利用できるのが「ショートステイ」です。ショートステイとは、短期間施設に入所して介護サービスを受けられる制度で、介護者の負担軽減と要介護者の安全確保を両立できる重要なサービスです。
しかし、「どんな種類があるの?」「費用はいくらかかる?」「どうやって申し込むの?」など、実際に利用しようとすると分からないことが多いのが現実です。
この記事では、ショートステイの基本概念から具体的な利用方法まで、必要な情報を分かりやすく解説します。特に、特養と老健の違い、実際にかかる費用、利用手続きの流れなど、実践的な情報を重点的にお伝えしています。
ショートステイとは?基本概念と制度の仕組み

まず、ショートステイの定義と制度上の位置づけを正確に理解しましょう。
ショートステイの定義と目的
ショートステイとは、介護保険法第8条に基づく短期入所サービスの総称です。正式には「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の2種類に分類されます。
主な目的は以下の通りです:
- レスパイトケア:介護者の休息・負担軽減
- 緊急時対応:介護者の急病・冠婚葬祭時の一時的ケア
- 社会参加促進:要介護者の孤立防止・生活リズム維持
実際に、令和3年度には約38万人がショートステイを利用しており、在宅介護を支える重要な制度として定着しています。
介護保険制度での位置づけ
ショートステイは介護保険の「居宅サービス」に分類され、要介護者の在宅生活継続を支援するサービスです。また、要支援者向けの「介護予防短期入所生活介護」も提供されています。
重要なことに、ショートステイは在宅での生活を前提とした一時的なサービスであり、生活の場としての利用は想定されていません。そのため、連続利用は30日まで、累積利用日数は要介護認定期間の半分までという制限があります。
利用対象者と要介護認定
ショートステイを利用できるのは、原則として以下の方です:
介護保険適用の場合
- 65歳以上で要支援1・2、要介護1~5の認定を受けた方
- 40~64歳で特定疾病により要介護認定を受けた方
介護保険適用外の場合
- 自立(非該当)の方でも有料ショートステイは利用可能
- ただし、全額自己負担となります
したがって、まずは要介護認定を受けることが、経済的負担を軽減する第一歩となります。
ショートステイの種類と施設による違い

ショートステイには3つの主要な種類があり、それぞれ特徴が大きく異なります。
短期入所生活介護(特養ショートステイ)
特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどで提供される、生活支援中心のショートステイです。
主な特徴:
- 食事・入浴・排泄などの日常生活支援
- レクリエーション・軽度の機能訓練
- 要介護度の高い方の受け入れが中心
- 介護職員による手厚い生活支援
適している方:
- 日常生活全般で介護が必要な方
- 医療的ケアをあまり必要としない方
- 生活リズムの維持を重視したい方
短期入所療養介護(老健ショートステイ)
介護老人保健施設(老健)や病院・診療所で提供される、医療ケア・リハビリ中心のショートステイです。
主な特徴:
- 医師・看護師による医療ケア
- 理学療法士・作業療法士によるリハビリ
- 服薬管理・医療処置への対応
- 在宅復帰を目指した機能訓練
適している方:
- 医療的ケアが必要な方
- リハビリにより機能向上を目指したい方
- 退院後の在宅移行期にある方
有料ショートステイ(介護保険適用外)
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で提供される、介護保険適用外のショートステイです。
主な特徴:
- 柔軟なサービス提供・利用期間
- 充実した設備・個室利用可能
- 要介護認定の有無に関わらず利用可能
- 緊急時対応が比較的柔軟
適している方:
- 自立~軽度要介護の方
- 質の高いサービス・環境を求める方
- 緊急時に短期間利用したい方
施設タイプ別比較表
項目 | 特養ショートステイ | 老健ショートステイ | 有料ショートステイ |
---|---|---|---|
主なサービス | 生活支援・介護 | 医療ケア・リハビリ | 柔軟なサービス |
費用(1日) | 600-800円程度 | 700-900円程度 | 10,000-30,000円 |
医療対応 | 基本的なケア | 充実した医療ケア | 施設により差 |
予約の取りやすさ | 困難 | やや困難 | 比較的容易 |
利用期間 | 最大30日 | 最大30日 | 柔軟 |
※費用は自己負担1割の場合の目安です。地域・施設により異なります。
ショートステイの利用条件と手続きの流れ

ショートステイを実際に利用するための要件と、申込から利用開始までの具体的な手順を説明します。
利用要件と要介護認定
基本的な利用要件:
- 要介護・要支援認定を受けていること
- 在宅での生活を基本としていること
- 利用目的が制度趣旨に適合していること
さらに、介護保険制度では以下の利用条件が定められています:
- 利用者の心身の状況や病状が悪い場合
- 家族(介護者)の疾病、冠婚葬祭、出張
- 家族(介護者)の身体的・精神的負担の軽減
したがって、単純な宿泊目的での利用は認められておらず、介護者のレスパイトケアや緊急時対応としての利用が前提となります。
申込から利用開始までの流れ
Step 1: 担当ケアマネジャーへの相談
- 利用希望期間・目的を具体的に伝える
- 医療ニーズ・特別な配慮事項を確認
- 利用可能日数・予算の確認
Step 2: 施設の選定・見学
- ケアマネジャーから候補施設の紹介
- 可能であれば事前見学を実施
- サービス内容・料金の詳細確認
Step 3: 申込・契約手続き
- 利用申込書の提出
- 契約書・重要事項説明書の確認
- 利用日程の確定
Step 4: 事前打ち合わせ
- 生活状況・ケア内容の詳細確認
- 服薬・医療的ケアの引き継ぎ
- 緊急連絡先・送迎方法の確認
Step 5: 利用開始
- 必要物品の準備・持参
- 施設での受け入れ手続き
- サービス開始
必要書類と準備物
必要書類:
- 介護保険被保険者証
- 介護保険負担割合証
- お薬手帳・服薬情報
- 健康保険証
- 利用申込書(施設指定様式)
準備物(一般的な例):
- 着替え(2-3日分)
- 洗面用具・タオル
- 常用薬・医療用品
- 入れ歯・眼鏡などの必需品
- 現金(小遣い程度)
利用適性セルフチェック
以下のチェックリストで、ショートステイ利用の適性を確認してみましょう:
利用目的の適性 □ 介護者の休息・リフレッシュが必要 □ 冠婚葬祭・出張等で一時的に介護できない □ 介護者の体調不良・急用がある □ 要介護者の社会参加・刺激が必要 □ 将来の施設入所に向けた体験をしたい
利用準備の適性 □ 要介護認定を受けている □ 担当ケアマネジャーがいる □ 利用希望期間が30日以内 □ 基本的な費用負担が可能 □ 必要な医療情報を整理できている
チェック結果:
- 8-10個:利用に適している
- 5-7個:準備を整えれば利用可能
- 4個以下:事前相談・準備が必要
ショートステイの費用と料金の仕組み

ショートステイの費用は複数の要素から構成されており、事前の理解が重要です。
基本料金の仕組み(介護度別)
ショートステイの基本料金は、要介護度と施設タイプによって決まります。介護報酬は「単位」で設定され、1単位=10円として計算されます。
短期入所生活介護(特養等)の基本料金例:
要介護度 | 多床室(円/日) | 個室(円/日) | 自己負担1割(円/日) |
---|---|---|---|
要介護1 | 596 | 626 | 60-63 |
要介護2 | 665 | 695 | 67-70 |
要介護3 | 737 | 767 | 74-77 |
要介護4 | 806 | 836 | 81-84 |
要介護5 | 874 | 904 | 87-90 |
短期入所療養介護(老健等)の基本料金例:
要介護度 | 多床室(円/日) | 個室(円/日) | 自己負担1割(円/日) |
---|---|---|---|
要介護1 | 759 | 828 | 76-83 |
要介護2 | 808 | 876 | 81-88 |
要介護3 | 865 | 934 | 87-93 |
要介護4 | 918 | 987 | 92-99 |
要介護5 | 973 | 1,042 | 97-104 |
※地域により単価が異なります。詳細は利用予定施設にご確認ください。
食費・居住費などの追加費用
基本料金とは別に、以下の費用が必要です:
食費(1日あたり):
- 朝食:450円程度
- 昼食:640円程度
- 夕食:680円程度
- 合計:1,770円程度
居住費(1日あたり):
- 多床室:320円程度
- 従来型個室:1,150円程度
- ユニット型個室:1,970円程度
その他の費用:
- 送迎費:片道200-500円程度(施設により異なる)
- 理美容代:実費
- 嗜好品・日用品:実費
軽減制度と自己負担の実例
所得の低い方には、食費・居住費の負担軽減制度があります:
負担限度額認定証による軽減(1日あたり):
区分 | 食費 | 居住費(多床室) | 居住費(個室) |
---|---|---|---|
第1段階 | 300円 | 0円 | 320円 |
第2段階 | 390円 | 320円 | 420円 |
第3段階① | 650円 | 320円 | 820円 |
第3段階② | 1,360円 | 320円 | 820円 |
実際の費用例(要介護3・3泊4日利用の場合):
項目 | 一般的な負担 | 軽減適用時 |
---|---|---|
基本料金 | 296円 | 296円 |
食費 | 7,080円 | 1,200円(第1段階) |
居住費 | 1,280円 | 0円(第1段階) |
合計 | 8,656円 | 1,496円 |
したがって、軽減制度の適用により大幅な負担軽減が可能です。
ショートステイでの1日の流れとサービス内容
ショートステイでの生活がどのようなものか、標準的なスケジュールとサービス内容を説明します。
標準的な1日のスケジュール
ショートステイでの1日は、規則正しいリズムで構成されています:
6:00-7:00 起床・洗面
- 職員による起床介助
- 洗面・更衣の支援
- 体調確認・バイタルチェック
7:00-8:30 朝食・服薬
- 個人の状態に応じた食事提供
- 服薬管理・確認
- 口腔ケア
9:00-11:30 入浴・ケア
- 個浴または機械浴での入浴支援
- 順番制のため、入浴日は施設が調整
- 入浴しない日は清拭・部分浴
10:00-11:30 機能訓練・リハビリ
- 個別または集団での機能訓練
- 老健では理学療法士等による専門的リハビリ
- 歩行訓練・関節可動域訓練等
12:00-13:00 昼食・休憩
- 栄養バランスを考えた食事提供
- 食事介助・見守り
- 服薬・口腔ケア
14:00-15:30 レクリエーション
- 季節の行事・音楽療法
- 手工芸・ゲーム・体操
- 他の利用者との交流
15:00-15:30 おやつタイム
- 水分補給・軽食
- 会話・コミュニケーション
16:00-17:30 自由時間・面会
- 居室または共有スペースでの自由時間
- 家族面会時間
- 個別ケア・相談対応
18:00-19:00 夕食・服薬
- 夕食提供・食事介助
- 夕方の服薬管理
- 口腔ケア
19:00-21:00 自由時間
- テレビ鑑賞・読書等
- 就寝準備のサポート
21:00-22:00 就寝準備
- 更衣・洗面の介助
- ベッドへの移乗介助
22:00-6:00 夜間
- 夜勤職員による定期巡回
- 排泄介助・体位変換
- 緊急時対応
提供される主なサービス
日常生活支援:
- 食事介助・栄養管理
- 入浴・清拭・整容支援
- 排泄介助・おむつ交換
- 移乗・歩行支援
- 服薬管理
健康管理:
- バイタルサイン測定
- 医師・看護師による健康管理
- 急変時の医療対応
- 医療機関との連携
機能訓練:
- 日常生活動作の維持・向上
- 歩行・立位訓練
- 関節可動域訓練
- 認知機能訓練
レクリエーションとリハビリ
レクリエーション活動:
- 季節行事(お花見・夏祭り・敬老会等)
- 音楽療法・歌唱
- 手工芸・創作活動
- ゲーム・クイズ
- 体操・軽運動
専門的リハビリ(老健等):
- 理学療法(PT):歩行・動作訓練
- 作業療法(OT):日常生活動作訓練
- 言語聴覚療法(ST):嚥下・言語訓練
これらの活動により、心身機能の維持・向上と社会参加促進を図ります。
ショートステイ利用時の注意点とトラブル対策
ショートステイを安全・安心に利用するため、事前に知っておくべき制限事項と対策を説明します。
利用期間制限と予約の注意点
利用期間の制限:
- 連続利用:最大30日まで
- 累積利用:要介護認定期間の半分まで
- 例:認定期間6か月(180日)の場合、累積90日まで利用可能
予約に関する注意点:
- 人気施設は1-2か月先まで予約困難
- 年末年始・連休時は特に混雑
- 緊急時対応可能施設は限定的
- キャンセル料が発生する場合あり
実際に、多くの施設で予約待ちが発生しており、定期利用を希望する場合は早めの相談が重要です。
医療ケアの対応限界
対応可能な医療ケア(施設により異なる):
- 服薬管理・インスリン注射
- 褥瘡処置・導尿管理
- 胃ろう・経管栄養
- 痰吸引(条件付き)
対応困難な医療ケア:
- 人工呼吸器管理
- 24時間医師管理が必要な状態
- 精神科医療が必要な急性期
- 重篤な感染症
したがって、医療ニーズが高い場合は、事前に施設の対応可能範囲を詳細に確認することが必要です。
よくあるトラブルと対処法
トラブル事例と対策:
1. 環境に馴染めない
- 原因:初回利用での不安・混乱
- 対策:事前見学、慣れ親しんだ物の持参、段階的利用
2. 他の利用者とのトラブル
- 原因:認知症による行動・言動の衝突
- 対策:職員への相談、個室利用の検討
3. 医療的ケアの不一致
- 原因:情報伝達不足、施設の対応能力不足
- 対策:詳細な医療情報提供、事前打ち合わせの徹底
4. 想定以上の費用負担
- 原因:追加費用の説明不足
- 対策:契約前の費用詳細確認、書面での確認
5. 緊急時の対応遅延
- 原因:夜間・休日の医療体制不備
- 対策:緊急時連絡体制の事前確認
施設選択チェックポイント
安心してショートステイを利用するため、以下の点を確認しましょう:
基本情報の確認 □ 運営法人・事業所の信頼性 □ 職員配置基準の遵守状況 □ 利用定員・施設規模 □ アクセス・送迎サービス □ 利用料金の透明性
サービス内容の確認 □ 医療ケア対応範囲 □ リハビリ・機能訓練の内容 □ レクリエーション・余暇活動 □ 食事内容・アレルギー対応 □ 個別ケアの対応力
安全・安心の確認 □ 緊急時対応体制 □ 医療機関との連携 □ 感染症対策 □ 事故防止策 □ 苦情対応窓口
これらのチェックポイントを参考に、利用者の状態とニーズに最も適した施設を選択することが重要です。
ショートステイを上手に活用するためのコツ
ショートステイの効果を最大限に引き出し、在宅介護を持続可能にするための活用方法をお伝えします。
定期利用と単発利用の使い分け
定期利用のメリット:
- 職員が利用者の特性を理解
- 予約が取りやすい
- 生活リズムの安定
- 計画的な介護負担軽減
単発利用のメリット:
- 必要な時だけの利用で経済的
- 様々な施設を体験可能
- 緊急時の柔軟な対応
効果的な使い分け:
- 月1-2回の定期利用で介護者のリフレッシュ
- 冠婚葬祭・急用時の単発利用
- 要介護度の変化に応じた利用頻度調整
家族のリフレッシュと本人の社会参加
介護者にとってのメリット:
- 身体的・精神的休息
- 自分の時間の確保
- 介護以外の活動への参加
- 長期的な介護継続の基盤作り
要介護者にとってのメリット:
- 他者との交流・刺激
- 専門的ケアの体験
- 生活環境の変化による活性化
- 家族以外との関係構築
実際に、定期的なショートステイ利用により介護者のバーンアウト予防効果が確認されています。
将来の施設入所への準備として
施設生活への適応準備:
- 集団生活への慣れ
- 施設職員との関係構築
- 施設のサービス内容の体験
- 環境変化への順応性向上
施設選択の判断材料:
- 本人との相性確認
- サービス内容の適合性評価
- 職員の対応力確認
- 費用対効果の検証
したがって、ショートステイは単なる一時的なサービスではなく、将来の生活設計を考える上でも重要な役割を果たします。